訪日外国人客の受診や医療費の未払いなど、全国の病院に実態調査へ

2018年8月30日 tomiuri ONLINE

訪日外国人客が急増する中、厚生労働省は9月にも、滞在中にけがや病気で医療機関にかかった人数や医療費の未払いなど、訪日客の医療に関する実態調査を実施することを決めた。

 調査は、約1か月間に受診した訪日客の患者数と、未払いになった医療費のほか、医療通訳の配置状況などを全国約8400の病院に尋ねる。結果は今年度中にまとめ、東京五輪パラリンピックの開催地などで、自治体が対策をとるうえでの参考にしてもらう考えだ。

保健所に医療通訳タブレット 埼玉県が導入

2018年8月13日 日本経済新聞

 埼玉県は県内の保健所13カ所にタブレット端末を使った医療通訳サービスを導入した。端末を起動して言語を選択すると契約している外部のコールセンターにつながり、画面を通じて通訳者の顔を見ながら話ができる。2020年の東京五輪パラリンピック開催に向けて外国人が増えるのを見越して、円滑に外国語への対応ができるようにした。
 英語をはじめベトナム語スペイン語ポルトガル語など8カ国語に対応できる。タブレット端末は各保健所に1台ずつ導入した。保健師が患者の自宅や地域の病院などに出向くときにも利用できる。
 通訳者は医療通訳の研修を受けており専門的な医療用語のほか、日本の保険制度や公的な医療費助成制度などもわかりやすく説明できる。
 県によると、2016年に保健所で行った外国人への対応は388件。今後も外国人の利用が増えるとみて、保健所の利便性向上を図る。

石川、電話医療通訳の実証実験を報告、「脳外科」が1位

2018年7月11日 医療維新

 日本医師会が7月4日に主催した「第1回外国人医療対策会議」の中で、石川県の事例が発表された。
 石川県医師会の齊藤典才氏は、「石川県における電話による医療通訳の実証実験の取り組み」について紹介した。石川県は一般社団法人JIGHが運用する電話医療通訳のメディフォンを利用した実証事業を2017年10月から実施している。
 石川県では、この10年で中国人を中心に外国人観光客が増え続けており、さらに東京オリンピックを契機とした訪日外国人の増加を見込み、専門的で高度なコミュニケーションスキルを必要とする外国人患者の受け入れ環境の整備推進をしていく予定。
 齊藤氏はメディフォンの使用について「参加機関は手上げ方式であり、昨年の10月のスタート時は37医療機関だったが、今は42医療機関に増えている。対応言語は17言語あるが、中国語の利用が半数以上を占めている」と報告。半年間で100万円の費用を見込み、県医師会が30万円、石川県補助金70万円を予算化している。2017年10月から2018年3月までの半年間で、利用は165件、時間としては2265分、料金は約84万円だった。齊藤氏は「県単位で利用するすることで、多くの医療機関で電話医療通訳を活用できるようになった。同じシステムを使うことで講習会の開催や利用状況の把握もしやすい」と説明した。
 2017年10月から2018年3月分までの利用結果によると、平均利用時間は15分程度。診療科の利用状況は、脳神経外科が、26.7%、内科が10.3%と続く。このデータには在住者も含まれる。利用目的は診察・治療などのためが8割近くとなっている。
 今後の展開について、齊藤氏は「通訳者のスキルに差はあるものの、概ね医療行為について通訳者がある程度理解しており、対応がスムーズだという声が多い。石川県では今後ますます外国人患者が増える見込みであり、このシステムを利用することで、多くの医療従事者が安心して外国人対応ができるようにしたい」と述べた。

山梨赤十字病院に通訳機 外国人患者増加で富士急

2018年6月5日 毎日新聞 山梨
 富士北麓(ほくろく)で増加しているインバウンド(外国人訪日客)のけがや急病に活用してもらおうと富士急行はこのほど、外国人と会話できる通訳機「ポケトーク」を山梨赤十字病院富士河口湖町船津)に贈った。
     富士急グループ富士急トラベルはポケトークの販売代理店で、2月からレンタルを始めている。素早い対応が求められる医療現場で生かしてもらおうと寄贈した。
     山梨赤十字病院の外国人患者数は2015年度が152人、16年度が153人、17年度が172人。中国、台湾、タイ、マレーシアなどアジアからの訪日客が消化器系や発熱を訴えるケースが多いという。
     「ポケトーク」は縦11センチ、横6センチ、重さ90グラム。日本語で話し掛けるだけで音声やテキストで63の言語が翻訳できる。同院の今野述院長は「外国人が安心して医療を受けられる体制を作っていきたい」と話した。
     北麓の医療の中核的機関である富士吉田市立病院や、富士・東部小児初期救急医療センターにも寄贈した。

    在日外国人患者の手助けを 神戸で医療通訳研修会

     日本語能力が十分でない在日外国人が医療を受けるときの手助けする医療通訳を広めようと、病院関係者向け研修会がこのほど、神戸市中央区の神戸市立医療センター中央市民病院で開かれた。
     医療通訳のコーディネート業務を担うNPO「多言語センターFACIL(ファシル)」が主催。英語医療通訳の小松真奈美さんらを講師に迎え、約25人が参加した。
     講義では、医師から「患者にどんな症状があるのかまとめて教えて。日本人の倍の時間がかかる」と依頼された場合を取り上げた。小松さんは「通訳がまとめて訳すことはできない」と説明。「倍の時間がかかる」といった発言は差別的だと受け取られる恐れがあり、使わないよう注意を促した。
     また「脊椎」と「脊髄」など聞き分けづらい単語のほか、同意書の取り方や電話通訳などさまざまなケースを話し合った。
     参加した同病院の看護師(30)は「近年、中国や東南アジアからの患者が増えている。文化の違いが大きいことを学べ、少しずつスキルアップしたい」と話した。