国内初のJCI認証取得でメディカルツーリズムは広がるか

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8月25日20時49分配信 医療介護CBニュース
医療法人鉄蕉会(亀田隆明理事長)亀田メディカルセンター(亀田総合病院、亀田クリニック)はこのほど、国内の医療機関で初めてJCI(Joint Commision International)認証を取得した。JCI認証については、海外からの旅行者らを対象に美容形成や人間ドック、臓器移植などの医療サービスを提供する「メディカルツーリズム」に目を付け、外国人患者を積極的に受け入れようとアジア諸国の先駆的な病院が相次いで取得しており、亀田メディカルセンターも今後、「海外の患者様を積極的に受け入れていく」としている。今回の取得は、国内の「メディカルツーリズム」をめぐる動きにどのような影響を与えるのか―。

 JCIは米国イリノイ州に本部を置く国際的医療認証機関。教育活動やコンサルタントサービス、国際的な認証を提供することを通じて、世界の各地域でケアの安全性や質の向上に努めることを目的としており、世界37か国、250以上の医療機関がこの認証を取得している。

 同センターには8月3日から5日間にわたり、JCIの医師や看護師、病院管理者を含む国際医療専門家チームが派遣され、治療へのアクセス、患者アセスメント、感染管理など340以上の評価基準、1000以上の小項目について審査が行われた。

 同センターの担当者は「認証取得のため1年ほど前から準備を開始し、JCI認証への理解を深めようと約2400人の職員全員に100回近くレクチャーを行い、何度も模擬審査を重ねてきた」という。
 担当者は認証を取得した目的を「国際的視野での医療の質のチェック」「外国人患者のスムーズな受け入れ」とした上で、今後の病院運営について「国際関係部を強化し、海外の患者様を積極的に受け入れていく」と話している。

■国内では「せいぜい数病院」との見方も

 JCI認証については、中国や台湾、シンガポールなど、アジア諸国・地域の先駆的な病院が積極的に取得している。これは、「観光」と「医療サービス」を合わせたパッケージツアーである「メディカルツーリズム」に目を付け、外国人患者を積極的に受け入れる狙いがあるためだ。
 2007年版通商白書によると、欧米と同等の水準の先進・高度医療サービスを自国よりもはるかに低い費用で受けられるため、健康・医療目的でアジア諸国を訪れる外国人旅行者数が急増。06年に医療サービスを受ける目的でアジア地域を訪れた外国人旅行者数は180万人、市場規模は68億ドルに上るという。

 一方、日本国内でも「メディカルツーリズム」の検討が少しずつ始まっている。経済産業省は今年1月、「サービス・ツーリズム(高度健診医療分野)研究会」を設置。7月には、外国人向けの事業を行う医療機関や、それを支援する事業者へ向けたガイドラインを示した。同研究会では、このガイドラインを契機に、医療機関間で外国人向け医療サービスに関する情報交換、具体的事業のあり方の検討などが促進されることを期待するとしている。

 ガイドラインは、国際共同治験の推進を例に、「医療の国際化は大きな流れ」と指摘。また、国際的に日本の医療の費用対効果は大きく、技術的水準も高いとした上で、「外国からの需要に注意深く応えることが、日本の医療への新しい視点を得る機会にもなる」と強調した。その上で、健診や先端的医療など、医療保険制度と強いかかわりのない分野から外国とのつながりを開き、日本と外国双方の医療サービスの向上に向けた好循環を生み出す努力が必要とした。

 さらにガイドラインでは、より詳細なルール策定に向けた実証調査事業の検討を求めている。同事業については、外国人の受け入れに関心がある病院が「国際医療サービス推進コンソーシアム」(仮称)を形成し、実証調査を通じて具体的な受け入れ体制を構築することや、「国際医療サービス支援センター」(同)を形成して日本の医療情報を海外に発信することなどを想定している。
 同省は、新たに設置した「医療産業研究会」で、実施に向けた検討を始める予定だ。

 亀田メディカルセンターのJCI認証取得により、外国人患者の受け入れをめぐる国内の動きは加速するのだろうか―。株式会社MMオフィスで医療経営コンサルタントを務めている工藤高代表は、「やっと日本でも第一号が誕生したことに安堵している」としながらも、国内の他の医療機関にも取得の動きが拡大するかどうかについては懐疑的だ。工藤氏は、「医療機能評価のように2500を超える病院が取得するようなことは絶対にあり得ないし、その必要性もない」と指摘。「本気でメディカルツーリストを受け入れたい先駆的な病院に限定されるため、せいぜい数病院」との見方を示している。

これからの動きに注目です。