成田・医学部、「国際」全面に、定員140人 成田市、国際医療福祉大学、国との検討開始

2014年12月18日 m3.com

政府の国家戦略特別区域に指定された「東京圏」の成田市における医学部新設に関する分科会が12月17日、内閣府で開催された。
 会議は非公開で行われたが、公開された資料によると、医学部新設を目指す国際医療福祉大学の構想が、具体的に提示されたことが注目点だ(資料は、内閣府のホームページに掲載)。「国際的医療人材の育成」が目的で、定員は140人で、うち20人を特別国際枠として、海外研修を必修化したり、英語教育も積極的に取り入れ、卒業時には英語による診療が可能なレベルまで教育する。
 附属病院は600床規模を想定し、外国人に質の高い医療サービスや最先端医療を提供するほか、日本の医療技術の海外展開を目指す。
 海外研修、海外からの留学生の受け入れ、外国人の診療を重視するなど、「国際」というキーワードが全面に打ち出されている構想で、「医師不足への対応」などの言葉は見当たらない。
 2013年10月、日本経済再生本部は、国家戦略特区における医学部を検討する方針を打ち出した。その際、(1)地域医療に影響が及ぶ可能性があることから、東北地方における医学部の新設に動向に配慮し、検討、(2)既存の医学部等とは次元の異なる、際立った特徴を有する大学とする、(3)当初の目的に反して一般臨床医として勤務するようであれば、長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性もあり、仮に新設するにしても、1校とし、十分な検討が必要――という条件を付していた。
 内閣府地域活性化推進室によると、17日の会議では、国家戦略特区ワーキンググループの委員から、これらの条件は国際医療福祉大学が提出した資料でクリアしているとの意見が出たという。文部科学省厚生労働省は、医学部新設に当たっての具体的な課題をさらに掘り下げて、提示することが求められた。次回会議は両省の提示を踏まえ、議論を進める予定。

冒頭のみ取材が可能で、内閣府地域活性化推進室長の内田要氏は、「東京圏区域会議から10日足らずで、この分科会の開催にこぎつけたことは、関係各位の熱意と、真剣さの表れと思っている。この分科会では、医学部新設および追加の規制改革事項等について、事業の実施にかかる課題の抽出や解決方法の検討を行う」とあいさつ。12月9日の「東京圏」の第2回区域会議で、成田市提案の医学部新設などについて、分科会を設置して検討するとされていた(『成田・医学部新設の検討、「重要で緊急性は高」』を参照)。
 「10日足らずで開催にこぎつけた」
 17日の主な議題は、医学部新設。内田室長は、「政府の昨年の決定から、1年以上経過しており、早期の規制改革の実現が望まれている。スピード感を持って、論点をつめていきたい」と述べた。
 分科会は、国、成田市のほか、国際医療福祉大学の代表者で構成。成田市からは、任期満了に伴い、12月14日に告示された成田市長選で、対立候補がなく3選を決めた、小泉一成氏ら4人が出席。国際医療福祉大学からは、総長の矢崎義雄氏ら4人が出席したが、理事長の高木邦格氏の姿はなかった。そのほか、民間有識者3人のほか、オブザーバーとして文部科学省厚生労働省の幹部が出席。
 「特別国際枠」20人、海外研修が必修
 国際医療福祉大学は、成田市ともに進める「国際医療学園都市構想」の実現に向け、医学部の具体的構想を提示。

 国際的医療人材の育成が目的で、グローバルスタンダーに対応した医学部を目指す。世界医学教育連盟(WFME)の標準を超えた医学教育を行うとし、入試の段階から、国際医療協力と地域医療貢献への志が高い学生を面接や小論文で選抜。
 定員は140人、うち20人を特別国際枠として、海外研修を必修とするなど、より国際性の高いカリキュラムを用意する。特別国際枠の学生は、南アジアおよびアラブ諸国から1カ国を選び、1年次から5年次まで毎年2、3週間程度、医療事情や文化を現地で調査、英語での報告会を実施する。
 診療参加型臨床実習に重点を置き、2年間で80週を充てるほか、海外の医療制度を現地に赴き、学ぶ授業も用意。英語による教育も積極的に取り入れ、英語による診療が可能なレベルまで教育する。世界最大級の医学教育シミュレーションセンターなども導入する。
 授業料は、私立の医学部では一番低い水準を設定。成績上位者や留学生については、減免する。
 共同する企業名も列挙
 附属病院は600床規模を想定。タイのバンコク病院やバムルラード国際病院、シンガポールラッフルズ病院などを例に挙げ、外国人に対し質の高い医療サービスの提供を目指す。(1)東京オリンピックパラリンピックに対応でき、その後も国際的に発展、(2)最先端の医療を提供、(3)海外医療機関と連携し、東南アジア諸国等の医療レベルの向上を図るとともに、日本の優れた医療技術を海外に展開――などに取り組む。
 そのほか、最新鋭の高度医療機器の共同開発や、医療用・介護用ロボット技術の研究開発拠点として「トレーニングセンター(仮称)」なども設置する方針。これらは他大学や医療産業と共同して進めるとしており、共同相手として東芝メディカルシステムズ(株)、浜松ホトニクス(株)、サクラグローバルホールディングス(株)、パナソニッ(株)については、実名が挙がっている。
 成田市規制緩和を要望
 成田市は、構想実現に向け、規制緩和を要望した。具体的には、(1)医学部設置認可を規制している文科省告示の緩和、(2)成田市が属する印旛保健医療圏には不足病床がないため、附属病院の新設のための病床を認める、(3)二国間協定に基づく外国医師の業務解禁、(4)EPA締結国、公文交換国以外の国については、日本の看護師資格の所有者に関しては「在留資格の認可」を認めるほか、放射線技師、臨床検査技師理学療法士作業療法士、視機能訓練士、言語聴覚士などについても、附属病院における「臨床修練期間の延長」を認める、(5)事業の実施区域に限定した、農地転用に係る許可権限の成田市長への移譲、農業振興地域整備計画を変更する際の協議の省略――などだ