取り込め!訪日外国人 /1 歓迎、大阪(その2止) 通訳体制拡充を 患者の意思を橋渡し /大阪

毎日新聞 2016年1月1日 地方版

 りんくうタウンを国際医療拠点とするには、患者の外国人と日本人医師らの意思疎通を仲介する通訳が必要だ。このエリアにある地方独立行政法人りんくう総合医療センター泉佐野市)には、研修中も含め約70人の医療通訳がいる。今後、さらに多くの人数の確保が期待されている。

     同センター泌尿器外来を先月上旬、バングラデシュ人で府立大に留学している研究員、ゴファ・ロイハンさん(35)が受診した。
     診察室には医療通訳の小松真奈美さん(49)が同席した。ゴファさんは1年前から尿の出が悪く通院しており、小松さんから英語で「経過は順調」と医師の言葉を伝えられた。これまで機器を使って尿を出していたが、「順調なら機器の使用回数を減らしたい」と要望。回数を減らす代わりに検査の頻度を増やすことになった。
     小松さんは元看護師。今は専門学校などで英語教師をしながら月1回、医療通訳としてセンターに勤務している。小松さんは「ゴファさんがラマダン(断食月)の時に『日中は薬が飲めない』と訴えたこともある。宗教や文化の違いを理解することも大事」と話す。
     センターは2006年度、国際外来(現国際診療科)を創設。英語とポルトガル語が話せる8人で通訳を始めた。医療通訳に資格はなく、試験や現場経験など独自の認定基準を設けている。現在は英語、中国語、スペイン語ポルトガル語に対応している。06年度88件だった通訳件数は14年度は862件と増加。8割が在留外国人だが、外国人旅行者は「14年は月数人だったが、15年は多い月で20人が受診している」(国際診療科)という。
     国際診療科の南谷かおり部長(50)は「医療通訳は医療用語の勉強も必要で責任も重いのに、公の資格ではなく報酬も不安定。資格制度や金銭的サポートが必要だ」と訴える。厚生労働省は14年度から全国で医療通訳の拠点病院を認定し、人件費などの支援を始めた。センターも認定されている。南谷部長は「不十分な点は多いが、支援が始まったことは歓迎したい」と話している。