筆談OK耳マーク広がれ 聴覚障害の女性奔走

「聞こえなくなるまでに、耳マークを広めることが私の使命」。耳が不自由な山口市の加茂由喜枝さん(52)は、店頭や窓口などで聴覚障害者からの筆談を受け付けることを示す「耳マーク」を広めようと県内を奔走している。(井上裕文)

 耳マークは、1975年に名古屋市が制定した「耳のシンボルマーク」が元になっており、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(東京)が2003年に文化庁著作権を登録し、全国的な普及に取り組んでいる。聴覚障害者の間では、会話の際に声が大きくなることで相手に誤解を与えたり、自分の発音にコンプレックスがあったりして、筆談を望む人も多いという。

 加茂さんは、宇部市出身。生後間もなく聴覚が悪化した。小中学校は普通校に通ったが、クラスメートらに「聞こえるふりをするなんて、うそつき」と言われるなど、いじめにも遭ったという。就職した後も同僚に誤解を受けることが多く、十数回も職を変わった。

 今年4月、県中途失聴・難聴者協会で耳マークの普及担当に就任した。しかし、5月、突然、全く聞こえなくなり約1週間入院。補聴器で聴力をかろうじて保っているが、医師からは「いずれ失聴する」と宣告された。

 そんな時、思い出したのが父・村上鑑(あきら)さん(故人)の「耳が聞こえなくなっても社会でやるべきことは必ずある」という言葉だった。耳マークを広げようと心に決め、企業や団体を回り、協力を求めた。

 同協会によると、県内のトヨタ自動車系列の販売店約130店をはじめ、山口市内の大手家電販売店や病院などが、加茂さんの呼びかけに応じ、マークが描かれたポスターや表示板を設置したという。メモ帳やシールなどを合わせたグッズも就任以降、300点以上を売り上げた。

 マークを設置したドコモショップ新山口店(山口市)の藤原司店長(36)は「利用者に難聴者がいるので、少しでも力になれたら」と話す。

 加茂さんは、多くの聴覚障害者の来県が見込まれる2年後の山口国体と全国障害者スポーツ大会に向け、マーク掲示を呼びかけている。「大会を聴覚障害者への理解を広げる機会にしたい」と言う。

 掲示用の耳マークのポスター(A3判)は1枚100円、表示板セットは1組300円。問い合わせは、加茂さん(ファクス083・923・8722)へ。

(2009年11月13日 読売新聞)

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耳マークは、1975年に名古屋市が制定した「耳のシンボルマーク」が元になっており、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(東京)が2003年に文化庁著作権を登録し、全国的な普及に取り組んでいる。
↑これは知らなかったですね。