手話通訳者、岐阜市民病院に常勤 県内の国公立病院で初

2011年06月21日10:07 岐阜新聞
 岐阜市鹿島町岐阜市民病院に今月から専任の手話通訳者が常勤している。聴覚障害者がコミュニケーションを円滑にし、安心して医療を受けられるよう、診察や治療時などに意思の伝達を手話でサポートする。手話通訳者設置の医療機関は全国的にも少なく、県内の国公立病院では初の試みとなる。
 手話通訳者設置は同病院が現在進めている改築整備事業を前に、各障害者団体の代表者を集めて開いた懇談会で、同市聴覚障害者福祉協会前会長の川上昭雄さんが要望。同市には手話通訳者同行を依頼できる公的な派遣サービスはあるが、事前に予約が必要であったり、急には依頼できないこともあり、利用の制約を受けざるを得ないのが実情。体調変化は急なことも多く、体に変調を感じながらも病院でのコミュニケーションが不安で大事に至るまで病院に行けなかった人もいた。このため、「いつでも安心して病院にいけるように専任の手話通訳者の設置を」と訴えた。

 要望を受け同病院は、ソフト面でも医療提供体制の充実を目指し、「手話通訳者設置」サービスの導入に踏み切った。


 病院では平日の午前8時30分から午後1時30分まで手話通訳者を設置。厚生労働大臣認定の手話通訳士多丸京子さんが、診察や検査・入院説明、治療時などに、希望に応じて付き添う無料サービスを行う。普段は総合案内窓口に待機している。

 手話通訳者設置を受けて川上さんは「聴覚障害者にとって病院はコミュニケーションが図れるかどうか常に不安な場所。自分の行きたい時間に自由に受診できるところではなかった。不安を安心に変えてくれる希望の大きな一歩」と語り、設置後の利用者はまだわずかだが「いつでも対応してもらえるという安心感はほかに替え難い」と感謝した。
 
多丸さんは「これまで病院に行きたくても行けなかった人の心の負担を少しでも減らせる存在であり続けたい」と話している。