医療通訳 救急救助訓練に初参加 言葉通じず戸惑いも

2013年11月7日 東京新聞

 医療通訳の体制が未整備とされる日本。六日、県内であった交通事故の救急救助訓練で初めて医療通訳が加わった。医療通訳ボランティアらが一月に結成した「群馬の医療と言語・文化を考える会」の会員七人。外国人のけが人の対応に付き添い、けが役も担当した。正確なコミュニケーションが重要な医療現場の課題を追った。 

 関越自動車道の赤城高原サービスエリア(昭和村)で行われた訓練は、大型バスが乗用車に追突し、計十四人がけがをした想定。消防や警察関係者ら六十人が重症者の判別や、ヘリによる搬送の手順を確認した。

 バス内でけがをした外国人四人が、それぞれ母国語で苦しそうに訴えた。医療通訳二人が「この人は吐き気がある」「力が入らないと言っている」と救急隊員に伝える。四人は日本語が分からない想定で、言葉の壁に戸惑う隊員の姿もあった。
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 外国人の患者は症状を正確に伝えられない場合や、病院の説明を理解できない場合があり、必要な治療が受けられないこともある。医療通訳の出番だが、通訳はボランティアによって支えられているのが現状だ。

 県は二〇〇六年度から医療通訳ボランティアの派遣を始めた。養成講座を受けた百十六人が登録し、八言語に対応する。派遣はここ数年増え、一二年度は百三十一件。ただし派遣先は、医療事故があっても通訳の責任を問わない条件に同意した病院十五カ所などに限られる。手配にも時間がかかることが多く、派遣できなかった事例も昨年度二件あった。
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 「通訳の担い手がもっと必要だ」と県の担当者。訓練を主催した県等関越自動車道等消防連絡協議会の真下和宏会長は「海外の観光客は多い。医療通訳ボランティアと協議していければ」。考える会世話人鍼灸(しんきゅう)師の原美雪さんは「必要な人に通訳を届けられるようにしたい」と話した。

 問い合わせは県NPO・多文化共生推進課=電027(226)2293=へ。