外国人、安心受診で「おもてなし」 病院、東京五輪に向け

2014年9月5日 日本経済新聞 電子版

 2020年東京五輪パラリンピックに向け、都内の病院が外国人患者を受け入れる準備を急いでいる。選手の治療にあたる「オリンピック病院」を中心に語学研修や対応マニュアルづくりが進んでおり、外国人が安心して受診できる「おもてなし医療」を目指す。関係者は「日本の医療の質の高さを海外にアピールするきっかけにしたい」と話している。
 「Do you have a hospital card?(診察券はお持ちですか)」。
 都立広尾病院(渋谷区)で8月、看護師や事務職員十数人が参加する英語研修「語学リーダー養成コース」が始まった。都が独自に作った教材を使い、病院でよく使う英語表現を学ぶ。
 医療の専門用語を外国人に分かりやすく伝えるのは難しい。例えば「urinate」(排尿する)。オーストラリア人の女性講師は「若い人には、おしっこ(pee)と言わないと伝わらないかも」などと助言していた。
 五輪開催時は多くの旅行者が世界中から東京に集まり、盛夏のため熱中症などの治療が必要となる可能性が高い。都は今年度、都立病院の国際化対応検討委員会を設置。オリンピック病院の指定を受けた都立3病院を中心に、語学研修のほか、食習慣や輸血の可否など海外の文化・宗教を学ぶ勉強会を開く。
 都の川田正敏・医療人材担当課長は「6年後までに、各職場に最低1人以上は外国人患者にきちんと寄り添える人材を育てる必要がある」と強調する。
 民間病院では一歩先を進んだ対策もある。東京湾岸部の選手村周辺と都心部を結ぶ環状2号線沿いに立地する虎の門病院(港区)は18年度に予定する建て替えに伴い、院内の言語表示を日英中韓の4カ国語に増やし、設置場所も増やす計画だ。
 「外国人が表示をみるだけで院内を移動できる環境を整えたい」と事務部の西岡重吉郎次長。新病院には外国人向けの特別病棟をつくる構想もあるという。
 国際医療認証機関「JCI」の認証を12年に取得した聖路加国際病院中央区)は現在約3%の外国人患者比率を20年までに10%に引き上げる目標を掲げる。
 昨年5月から外国人患者に応対する4人の「国際係」を配置。英語、中国語、ロシア語、タガログ語を使い、診療科などの要請に毎日30件程度応じているという。福井次矢院長は「五輪を機に質の高い日本の医療を海外にアピールしたい」と話している。