枚方「医療通訳士」を拡充

2016年8月29日 読売新聞 

◇韓国・朝鮮語加え8人増員
 日本語がうまく話せない外国人が医療機関で受診する際、医師との意思疎通を助ける「医療通訳士」について、枚方市が派遣事業を拡充させている。6月、対象言語に韓国・朝鮮語を新たに追加。医療通訳士を増員し、医療機関の派遣対象も広げた。府内で暮らす外国人は約21万人(2015年)で、このうち、枚方市は3910人。医療通訳の必要性は高まるとみられ、市の担当者は「安心して医療を受けられる環境を整えたい」としている。
 医療通訳士は現在、公的な資格制度はなく、民間団体などが人材育成などを担っている。外国人が医療機関を受診する際、病状や診察内容などを通訳するもので、通訳によって誤診や医療事故の防止、医師の負担軽減にもつながると期待されている。
 枚方市には関西外大などに留学している学生も多く、医療機関からの要望もあり、市は昨年、市内の33医療機関を対象に医療通訳士の派遣を開始。医療通訳の育成、派遣を行うNPO法人「多文化共生センターきょうと」(京都市)に委託し、同NPOが、市と派遣協定を結んだ医療機関との調整を行っている。
 利用は患者が受診予定日の5日前までに医療機関に申し込む。費用は3時間4000円で、延長の場合は30分ごと500円。枚方市が費用の全額を出し、患者本人の負担はゼロ。
 昨年度は内科や産婦人科など6医療機関で計131件(英語31件、中国語100件)の利用があった。今後も利用が増えるとみて、市は今年6月、これまで英語、中国語だった対象言語に韓国・朝鮮語を加え、医療通訳士を8人増やして10人体制に。派遣対象も47医療機関に拡大させた。
 また、通訳の質を高めようと、同NPOと連携し、専門的な医療用語や実際の診察の現場を想定したロールプレイング(役割演技)などの講座を開催。3日間の講座の後、審査を経て登録される仕組みで、現在、プロの通訳のほか、主婦らが登録されている。
 医療通訳については、国も対策に乗り出している。厚生労働省は2014年度、育成、派遣の支援を始め、今年度は育成機関への費用補助などに1億4000万円を計上。同NPOは「医療通訳には高い専門性を求められるため、報酬と身分を保障していくべきだ」と資格としての確立の必要性を指摘する。
 枚方市によると、府内で自治体が医療通訳の派遣事業に取り組むのは同市だけといい、吹田市では財団法人や大阪大医学部付属病院などが行っている。
 枚方市健康総務課の担当者は「訪日外国人が増加している中、需要は今後も高まる。スペイン語ポルトガル語の通訳士の養成も検討していきたい」としている。