外国人患者受け入れ 電話で通訳、診療を円滑に 県医師会が試験運用 /石川

2017年10月24日 毎日新聞

 医療現場も国際化の時代--。北陸新幹線の金沢開業で県内への外国人観光客が増加する中、県医師会(金沢市)が外国人患者の受け入れ環境の整備を進めている。医療に詳しい通訳者が対応する専用電話を介して、医師と患者がコミュニケーションをとれるサービス「メディフォン」の試験運用を今月からスタートした。1年かけて患者のニーズや利便性を見極め、本格導入を検討する。
 同サービスは、医療分野の課題解決に取り組むシンクタンク「JIGH」(東京都)が2014年1月に開始した。日本語が話せない外国人患者と接した医師から相談を受けたことがきっかけという。

メディフォンは、医師が外国人患者を診療する際、まずJIGHに電話し、医療に詳しい通訳者を介して患者から症状や病歴を聞き取る仕組みだ。患者も、医師の診断や助言を通訳を通して知ることができる。ほとんどの言語で予約の必要がなく、急なけがや病気の診療にも対応できるため好評で、これまでに全国約1400の医療機関で利用された。
 県内の年間の外国人宿泊者数は、14年は29万3956人だったが、15年3月の北陸新幹線金沢開業を経て16年には52万9473人に急増し、居住者も2年間で15%以上増加した。県医師会は、3年後に控えた東京五輪パラリンピックなどの影響で今後さらに外国人患者が増えると予想し、金沢や小松、七尾など9市町の37医療機関でメディフォンの試験運用を開始。担当者は「患者の情報を正確に聞き取れなければ治療方針も立てられない。サービスの導入で言葉の壁を乗り越え、的確な診療につなげたい」と期待している。
 今月6日には金沢市の浅ノ川総合病院で、ベトナム人患者が同サービスを利用。診療にあたった形成外科の池田和隆医師は「同伴者も日本語がしゃべれない状態だったが、サービスを利用することで患者も自分の意見が言え、コミュニケーションが円滑に進んだ」と話した。
 対応言語はロシア語、タイ語ポルトガル語スペイン語など12言語。午前8時半から翌午前0時まで利用できる(英語、中国語、韓国語は24時間対応)。患者に費用負担は求めない。同医師会のホームページでメディフォンを試験運用している医療機関を確認できる。