善意頼みの在住外国人診療2

毎日新聞 2010年10月13日

 ■生計立てられず
 りんくう総合医療センターなど一部の病院やNPO法人で、患者が心安く通訳を頼み、通訳も腰を据えて活動できる仕組み作りが進む。センターは06年度から「国際外来」を設け、曜日に応じて中国語やポルトガル語など4言語の医療通訳が待機する。利用者の費用負担はない。英語通訳の榊智子さん(42)は「医療チームの一員として診療に必要な情報を共有し、正しく訳したか通訳同士で確認し合える」と仕事環境を評価する。「医師にとっても誤診を防ぎ、薬の飲み方まで指導できる」と南谷(みなみたに)かおり・健康管理センター長(45)は話す。

 センターや医療通訳を派遣する団体などは通訳技術や医療文化の研修も開き、日常的に相談できる態勢も取る。それでも課題は残る。個々の施設や団体では資力の限界もあり、地域を越えた体制作りまでは困難。診療報酬対象でないこともあり、通訳者の報酬はあっても大抵少ない。京都市内で4病院に医療通訳を派遣するNPO法人「多文化共生センターきょうと」の中国語通訳、西村かおるさん(45)は「仕事と両立できず泣く泣く辞めた仲間もいる。生計を立てられるようになればいいのだが」と話す。

 ■テレビ電話で
 りんくう総合医療センターに国際外来を設けた伊藤守・元副院長(57)は、拠点病院を全国に数カ所設け、テレビ電話で各地の中核病院とつなぐ制度を提案する。医療通訳は拠点に常駐し、テレビ電話を介して地方病院の診察も訳す。「患者は全国どこでも母国語で診察を受けられ、通訳者も集中して仕事を受けられるので収入が安定する」と伊藤さん。榊さんも「『りんくう』のような病院は少数で、患者の命にもかかわるのに通訳者の立場は社会で中ぶらりんなのが実情です。国や都道府県レベルで制度化してほしい」と訴える。

 日本は最近、経済産業省を中心に、海外の富裕層に先端医療を提供する「医療観光」に力を入れており、経産省はそのための通訳育成を東京外国語大に委託した。一方、在住外国人が頼る医療通訳の現場は、個々の施設・団体の調整や通訳者の善意に任されたままだ。医療観光強化の一方で、日本に暮らし納税する外国人約220万人がなおざりでは、あまりにいびつでないか。在住外国人診療の現状を踏まえた制度検討が早急に必要だろう。

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在日外国人医療のことに取り組む方々目線が入った記事になっています。
医療観光の波に押されがちですが、関係者の方々には
このような記事にも注目していただきたいところです。