外国人ママの防災 支援

2012年6月3日 読売新聞

「避難」などの日本語解説 英語で地域情報
東日本大震災が起きた時、子どもの安否を真っ先に気遣った母親は多いはず。言葉がわからない在日外国人の母親の不安は、より大きかったと想像される。そんな母親たちに向けた支援の輪が広がっている。

 「まず、津波が来るかどうかが心配ね」「震源がどこかも気になる」「避難すべきかどうかも知りたい」

 首都圏在住の日本人主婦グループ「和なびジャパン」は今年4月、在日外国人の子どもたちが通う横浜インターナショナルスクール(横浜市)で防災セミナーを開いた。

 「必要な情報は」と英語で問いかけると、参加した約30人の母親らから、次々に声があがった。幼稚園児から高校生まで、欧米やアジアなどから来日した外国人の子どもらが在籍するが、震災時には保護者の多くが日本語の報道を理解できず戸惑ったという。

 セミナーでは「hinan(避難)」「kasai(火災)」などの漢字の読みや意味をスライドで説明。「高い所に逃げて下さい」などの日本語に合わせ、行動する訓練も行った。娘が幼稚園に通う英国人、エマ・レイノルズさん(32)は、「必要な日本語がわかって安心した」と話した。

 震災後に結成された同グループのメンバーは、外国に住んだ経験を持つ女性ら14人。同様のセミナーをこれまでに6回開いた。

 「災害時、母親は、子どもと一緒にいる可能性が父親より大きく、それだけ責任も増す」とグループ代表の木村素子さん(33)。自身も夫の転勤でマニラにいた際、テレビニュースでテロの映像が流れたが何が起きているのかわからず不安になった。「外国人のコミュニティーは孤立しがち。交流の輪を広げ、子育てなどでも日常的に支え合えれば」と訴える。

 外国人と日本人の母親ら1600人の会員を持つ英語交流グループ「トーキョー・マザーズ・グループ」は今年2月、会員が多く住む神奈川、千葉、埼玉の各県で、地域の情報を電子メールなどで教え合う「エリアコンタクトシステム」を作った。出産や育児などの生活情報に加え、災害時の避難先や公衆電話の場所といった防災情報も交換する。代表で英国出身の川合ステファニーさん(35)は、「食品の安全性について英語で情報共有するなど、地域単位で交流する必要性が増していた」と話す。

 外国人向けの日本語教室を主催する「ヤマガタヤポニカ」(山形市)も、日本人ママとの交流会を昨年度に15回開いた。欧米や韓国出身の女性らが参加。災害時の助け合いにも結びつけたいとしている。

 震災後、内閣府は、各地の国際交流協会の相談電話番号、災害関連の政府機関、自治体の多言語のリンク集をホームページ上に公開。放射能に関する情報を多言語で発信する自治体も増えている。

 多文化の共生に詳しい群馬大教育学部教授の結城恵さんは、「日本でも近所や職場に外国人がいることが珍しくなくなった。防災にも役立つ日頃からのつながり作りが重要」と指摘する。