医療観光めざし「特例通訳」…大阪・泉佐野市、育成・認定へ

2012年7月12日 読売新聞

関西空港対岸の「りんくうタウン」を医療ツーリズムの拠点にする計画を進める大阪府泉佐野市は、外国人を案内する有償の通訳ガイドの育成に乗り出す。

 通訳ガイドを有償で行う場合、通訳案内士の国家資格が必要だが、国の「地域活性化総合特区」に指定され、特例で育成が可能になった。特区を活用して育成に取り組むのは、同市を含めて全国で3地区のみ。地元の歴史や文化に精通した「特区ガイド」を充実させることで、関空から観光客を呼び込み、地域の活性化につなげる。

 観光庁によると、全国で約1万6000人の通訳案内士がいるが、67%が英語のガイド。中国語が12%、韓国語が5%と言語で偏りがあり、増加するアジアの観光客に対応できていない。泉佐野市内でも、有償の外国語ガイドは英語7人、中国、韓国、スペイン語各1人と慢性的に不足している。

 総合特区法は昨年6月に成立、国は特例制度を創設した。泉佐野市のほか、世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道」を活用した観光振興を目指す和歌山県の8市町、札幌市で、それぞれのエリア内に限られてはいるが、通訳案内士の資格なしで有償の通訳ガイドができるようになった。

 泉佐野市は11月、市民らを対象にガイドを募集。来年1~3月に、地域の特産品や文化、伝統などを学ぶ研修を行い、修了者はガイドに登録してもらう。2015年度中に100人を目標に養成する予定という。

 関空の玄関口に位置する同市には、旅行の初日や最終日に宿泊する客も多い。今年の外国人旅行者は、前年比4万6000人増の27万人になる見通し。

 今後、医療ツーリズムで訪れた人に加え、トランジット(乗り継ぎ)で関空に短時間滞在する客や、宿泊客も対象に、アウトレットモール、温泉、漁港を巡るミニツアーなどを提案。特区ガイドに案内役を務めてもらう。

 ただ、ガイドの需要をいかに掘り起こすかは課題となる。旅行業法では、旅行業務取扱管理者がいない病院やホテルでは、ツアーなどの旅行商品を代理販売できない。市は代理販売も特例で認めるよう国に求めており、引き続き交渉を続ける。

 市商工労働観光課の担当者は、「居酒屋など意外な場所も外国人には目新しく映り、人気だ。観光客に少しでも長く滞在し、消費してもらう仕組みを考えていきたい」と話す。

 ◆医療ツーリズム

 治療や検診を目的にした滞在型旅行。高度ながん治療で有名な病院などがある、りんくうタウン泉佐野市エリアは昨年、「国際医療交流」の拠点作りの特区に指定された。市は同タウンに医療施設を誘致するため、新規進出の病院などに5年間、固定資産税を事実上減免する措置に乗り出した。