医療現場に「言葉の壁」 通訳の専門職化求める

2014年8月4日 東京新聞 【群馬】

 外国人患者が適切な治療を円滑に受けられるように支援する「医療通訳」の現状を考えるシンポジウムが3日、前橋市の前橋プラザ元気21で開かれた。パネル討論もあり、ボランティアで支えられている医療通訳の厳しい課題が浮かび上がった。
 医療通訳ボランティアでつくる「群馬の医療と言語・文化を考える会」(前橋市)が初めて主催。医療や外国人支援などの関係者約八十人が来場した。
 神奈川県を拠点に外国人医療に尽力している内科医の沢田貴志さんは「医療通訳は誰のため?」と題して講演。言語の壁によって適切な医療を受けられなかった外国人患者の例を挙げ、「診断まで時間がかかったり、誤診が起きたりすれば、不利益を受けるのは患者だけでなく、病院もそうだ。不要な治療がかさめば自治体も負担になる」と指摘。「医療通訳が入ることで医療が円滑に進めば、地域全体のメリットにつながる」と主張した。
 県内の医療関係者ら十人が参加したパネル討論では、群馬大医学部付属病院(前橋市)の斎藤節子副看護師長が「言葉の壁を心配して、重症化するまで病院にかからない患者もいる」と報告。
 県立がんセンター(太田市)のソーシャルワーカー、小池由美さんは「現場は、その場しのぎで対応している」と指摘した。
 医療通訳の周知不足もあり、患者が子どもや友人など医療知識がない人に通訳を頼み、医療が滞ってしまうケースもあるという。
 さらに小池さんは、医師側がボランティアの医療通訳にどこまで頼っていいか戸惑う場面もあるといい、「ボランティアでは限界がある。専門職として活躍してほしい」と求めた。
 県は二〇〇六年度から医療通訳ボランティアの派遣を始め、養成講座を受けた百人超が登録。派遣は年々増えており、一二年度で百三十一件だった。