外国語で医療受診、都内で体制づくり広がる

2017年8月18日 日本経済新聞日本経済新聞
 東京都内で外国語で医療機関を受診できる体制づくりが広がっている。都は2020年度までに都立病院など14病院で多言語対応に関する認証を取得する計画。東京都看護協会(東京・新宿)は看護師向けの英会話研修を始めた。外国人観光客の増加や東京五輪を見据え、外国人が安心して東京観光できる基盤づくりにつなげる。
 都は都立病院と都保健医療公社が運営する公社病院の14病院で「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」を取得する。現在認証を得ているのは都立広尾病院(東京・渋谷)のみだが、都が運営に関わる全病院に広げる。
 「受付や診察で外国人対応マニュアルを用意する」「通訳の提供」などの要件を満たした病院が認証される。都によると、5月時点で都内で認証を取得した医療機関広尾病院虎の門病院(同・港)など8病院にとどまる。都が主導して認証病院を増やし、旅行中に体調を崩した外国人を受け入れる体制を整える。
 都はJMIPの認証取得とは別に、一定の外国人対応を備えた医療機関向けの補助制度も始める。院内の表示やホームページの多言語対応などが対象で、最大50万円を補助する。17~19年度の3年間で180の医療機関を補助する計画だ。
 看護師や保健師を対象に初心者向けの英会話研修を始めたのは東京都看護協会。20年東京五輪の救護所へ「サポートナース」として看護人材を派遣予定で、17年度に700人程度の受講を目指す。問診や応急手当てで使う医療用語などを学ぶ。研修は週に1度、1回90分で計10回。同協会担当者は「五輪前の日常の業務にも役立つ」と期待する。
 医療シンクタンク、ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH、同・港)はテレビ電話を使った医療通訳サービスの人員を4割増やす。現在は約280人の登録者を20年までに400人にする計画だ。通訳者が比較的少ないポルトガル語スペイン語などを中心に増員する。同社は「医学の知識と通訳技術が同時に求められ、育成に3年はかかる」とみる。
 医療機関を受診したいと相談する外国人は増えている。都が英中韓など5言語を対象に、外国語で受診できる医療機関などを紹介する電話サービスの16年度の相談件数は約8500件で、5年前と比べて8割強増えた。20年には外国人観光客を2500万人に増やす目標を掲げており、医療機関を受診できる体制づくりも課題となっている。